「約束はいらない」——
なんだこの思わせぶりなタイトルは。
でも、聴いてみると……タイトルがいちばん優しかった。そんな曲でした。
坂本真綾さんが16歳で歌ったこのデビュー曲。
アニメ『天空のエスカフローネ』のオープニングとして、多くの人の耳に届いた……はずなんだけど、
ぶっちゃけ私はアニメの内容をほとんど覚えていない(ごめんなさい)。
なのに、この曲だけは耳の奥にずっと住みついてる。
定期的に、遠くからうっすらと異国の雰囲気とともにバグパイプが鳴り出すので、
一瞬どこか異国の地に飛ばされそうになるんだけど、
ちょっと音が霞がかってるから「ハッ!?」ってすぐ現実に戻ってこられる。
そんな曲です。
若い頃って、やたら“約束”に憧れてた気がします。
友達との【今日の遊びの約束】があることで、その日一日ワクワクしてたじゃないですか?
でもこの曲は、その真逆をいきます。
「約束はいらない」って、たぶん究極の信頼なんじゃないですかね。
言わなくても、そばにいてくれるって信じられる。
そんな相手とだけ、成立する愛のかたち。
16歳の坂本真綾さんが、それを歌ってたってのがすごい。もうズルい。
この記事では、そんな坂本真綾さんの『約束はいらない』という一曲に込められた、
音楽と感情、そして“約束”という言葉の距離感について。
ピアノ弾きでもある私だださんが、少しだけ真面目に、でもそれなりにおかしく語っていきます。
『約束はいらない』が16歳のデビュー曲って反則じゃない?
坂本真綾さんの歌手デビュー曲『約束はいらない』
ちなみにこの曲ががリリースされたのは1996年の4月24日。
なんとこの記事を書いている今、ちょうどその時期なんですよね。
こうしてまた聴き返す“約束されたタイミング”だったのかもしれません。
- アニメの主題歌。
- 作曲は菅野よう子。
- そして16歳。
え、ちょっと待ってください。無敵か…。
私、16歳のころはピアノにドハマリしてて、勉強そっちのけでひたすら弾いてました。
でもこの『約束はいらない』みたいに、一定のテンポで淡々と“ダダダ、ダダダ”って進む曲って、弾いてみるとめっちゃ難しいんです。
跳ねないように、走らないように、もたつかないように。
タッチをコントロールしないと、あっという間に“リズムに置き去りにされる”という事故が起きます。
下手すりゃ腱鞘炎&突き指で、音楽と約束できなくなります。これは”約束”できます。
でも坂本真綾さんは、そんな難しいテンポ感の曲を、
感情が暴れすぎないギリギリの声で、あの年齢で歌いきってるんです。
しかも「うまい!」って思わせるんじゃなくて、
「この声、私の心にあった気がする」って思わせてくるんですよ。
初めて聴いたはずなのに、“知ってた”みたいな感覚。
当時のPCゲームの音楽のような印象のアレンジ、MIXに仕上がっているのですが
これはもう真綾さんの声そのものがストーリーテラーなんですよね。
そして真綾さんはその後、
エアリス(FF7リメイク)やライトニング(FF13)という、
“愛されヒロイン”と“背負い系ヒロイン”の両極を制覇してしまう。
声優としても、歌手としても、ストーリーを背負わせたら最強の布陣。
声の時点で、すでに感情の背景が見える。
でも…同じ16歳で、こっちはピアノ弾きながら「腱鞘炎か、これは」って思ってた。
この差、なんでしょうね。
「約束はいらない」って言われると、
「いや、そっちがそう言うなら…こっちも何も言わないけど…信じてるからな…」ってなるんですよ。
言葉にしない関係性に、救われた経験がある人は、みんなこの曲に引き寄せられてる。
ところでこの曲、特に大きな抑揚もなく淡々と終始演奏されているのですが、
この不思議な魅力はどこにあるのだろう?と考えてみたんです。
坂本真綾の声は、AIみたいに冷たいのに、なんであんなにあったかいの?
坂本真綾さんの声って、不思議ですよね。
強くもなく、甘くもなく、派手でもない。なのに一度聴いたら、ふっと心に残ります。
透明感が半端ない気がします。
私はこの『約束はいらない』を聴いて、改めて思ったんです。
これは歌詞の意味を理解して泣く曲ではありません。
音として、声として、感情がにじみ出ている曲なんだと。
奇をてらったアレンジではない
この曲って淡々と演奏される非常にシンプルなアレンジなんですよね。
真綾さんの歌声が乗って最終的に完成しているイメージです。
真綾さんの歌い方は、感情を過剰に込めるタイプではありません。
リズムは安定していて、言葉数も多くない。
それなのに、聴いているこちら側に自然と“感情の余白”が生まれていくんです。
むしろ、感情をあえて乗せすぎないからこそ、
聴く人の心の中で何かが動き出すような不思議な感覚があります。
AI的な歌声に感じるあたたかさ
こういう声って、ちょっとAI的だと思いませんか?
無機質なようでいて、どこか人間くさい。
表情が乏しいように見えて、なぜか安心感がある。
坂本真綾さんの声には、そんな“矛盾を抱えた温度”があるんですよね。
『約束はいらない』という曲も、まさにそうです。
未来を誓うわけでもなく、言葉で縛るようなラブソングでもありません。
それでも、確かに“誰かを信じている気持ち”が流れてくる。
この曲の魅力は、歌詞の意味よりも、
「どう歌われているか」「どんな距離感で届けられているか」にあるのではないでしょうか。
曲としても、声としても、感情を押しつけてこない。
なのに、確かに温かい。
坂本真綾さんの声は、そういう“あたたかさ”を持っていると思います。
『約束はいらない』──オリジナルとカバー、揺れるふたつの「声」
アニメ『天空のエスカフローネ』のオープニングとして使われた『約束はいらない』。
ですが、実際にこの曲を印象づけているのは、アニメのストーリーよりも、
坂本真綾さんの声そのものではないでしょうか。
正直、私もエスカフローネの細かい内容はほとんど覚えていません。
でも、この曲だけはずっと耳に残っています。
それだけ、“作品”と“曲”がそれぞれ独立して存在できる力を持っているのでしょうね。
そして最近、シンガーソングライターのやなぎなぎさんが、
『約束はいらない』をカバーしたことでも話題になりました。
やなぎなぎさんバージョンを聴いてみると、
まず感じるのは「声のハリ」と「感情の明確な乗り方」です。
歌手が歌手として、技術と感情をしっかりコントロールしながら歌っている。
声量も表現力も高く、歌としての完成度はとても高い。
これはこれで、素晴らしいカバーだと感じました。
ですが、比べてみると、やっぱり坂本真綾さんのオリジナルには
独特の“無機質さ”と“遠さ”があったことに気づかされます。
遠い異国の空気感がすごくあるんですよね。
淡々と、感情を込めすぎない。
それなのに、なぜか心が揺れる。
真綾さんの『約束はいらない』には、そんな雰囲気が漂っていました。
一方でやなぎなぎさんのカバーは、
その空気感が少しだけ現実に引き戻されたような印象を受けました。
力があるぶん、“あえて空白を残す”というオリジナルの儚さは、少し後退してしまったように感じます。
もちろん、それぞれに良さがあるのは間違いありません。
どちらが優れているとか、劣っているとか、そういう話ではないですよね。
ただ、改めて思うのは、
坂本真綾さんの『約束はいらない』は、「何も語らないことで何かを伝える」という、
とても稀有なバランスを持った曲だったのだということです。
まとめ
坂本真綾さんの『約束はいらない』は、
思いっきり“歌唱力で圧倒する曲”ではありません。
感情を過剰にぶつけてくるわけでもないのに、
聴いているうちに、いつの間にか心が動いてしまう。
そんな不思議な力を持っている気がします。
コンサートではもう少し声が前に出て、人間味も増している印象がありますが、
このデビュー当時の初々しい歌声こそが、
この曲に流れる“遠くて優しい距離感”を形づくっているのだと思います。
同じ曲でもオリジナル音源からしか感じられない空気感って好きです。
これからも、きっと多くの人の心に寄り添い続ける歌だと思います。
それにしても、声優ソング特集の第1弾が坂本真綾さんというのは、
今思えば、最高のスタートだったかもしれません。
ゲームキャラ業界でも圧倒的な存在感を放ち続ける彼女の声は、
歌でも、やはり特別でした。
最後までお読み下さいましてありがとうございました。
🎧最後に、オリジナルとカバー、両方の映像をご紹介します。
もしこの記事で感じたことが少しでもあれば、
それを思い出しながら、改めてこの曲に耳を傾けてみてください。
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